アリージャンス観劇~今私たちが観るべき作品

ミュージカル『アリージャンス~忠誠~』を観劇してきたので感想を書きます。(ネタバレあり、長いです)

コロナ禍で劇場に行けず、約1年ぶりの観劇。今回のアリージャンスと同じ、国際フォーラムホールCで昨年2月に上演された『CHESS』ぶりでした。幕が開いた瞬間から泣いてしまった。舞台に俳優さんが出てきた時にぶわっと。

第二次世界大戦中のアメリカで、強制収容所に入れられた日系人家族たちの話です。クオリティの高い素晴らしい舞台で、キャストの皆さんの歌、ダンス、芝居に魅せられました。眩しかった。

キャスト

濱田めぐみ(ケイ・キムラ、日系二世)
海宝直人(サミー・キムラ、日系二世)

中河内雅貴(フランキー・スズキ、日系二世)
小南満佑子(ハナ・キャンベル、白人看護婦)

上條恒彦(カイト・キムラ、日系一世/現代のサミー・キムラ)
今井朋彦(マイク・マサオカ、日系二世のJACL事務局長)

渡辺 徹(タツオ・キムラ、日系一世)

照井裕隆(ディロン局長)
西野 誠(ヒデオ・タナカ、日系一世/ベン・マサオカ)
松原剛志(マサト・マルヤマ、日系一世)
俵 和也(ジョニー・ゴトウ、日系二世)
村井成仁(ナイト二等兵)
大音智海(トム・マルヤマ、日系二世)
常川藍里(エヴァンス二等兵)

河合篤子(ナツミ・タナカ、日系一世/日系三世の女性)
彩橋みゆ(カオリ・マルヤマ、日系一世)
小島亜莉沙(ナン・ゴトウ、日系二世)
石井亜早実(ペギー・マルヤマ、日系二世)
髙橋莉瑚(ベッツィ・タナカ、日系二世)

余韻の強い作品でした。悲しい展開の後、最後は光を見せて終わる。ひとまずは清らかな気持ちで劇場を出ることができますが、やっぱり後から色々考えると、辛いな…となりしばらく引きずる感じです。俳優さんの演技から、劇中で描かれていないこともたくさん想像できる。史実を知りたくなります。収容所の暮らし、442連隊のこと、実在の人物であるマイク・マサオカのこと。

当時の時代背景について、キャストの大音智海さんがアップされていた動画が大変参考になりました。

日本人が日本語で、日系人と白人を演じる難しさがありますが、違和感はありませんでした。緻密に練られたことが分かります。日本で上演してくれたことに感謝です。

濱田めぐみさんの「Higher」は、1曲の中に沢山のものが詰まっていました。おじいちゃんがブランコ作ってくれたんだとまず泣け、ママとの思い出、ママが亡くなったと同時にケイの子ども時代が終わってしまった切なさ、劇中では描かれていない過去が見えます。そして弟への強い愛。と、自分の人生を生きる決意。

訳詞でここまで表現できるのだなと…アナ雪などのディズニー映画や数多くのミュージカルの訳詞を担当されている、高橋知伽江さんによるものです。それが濱田さんの凄まじい表現力とパワーをもって歌われます。

海宝直人さんのサミーは、ブレなさ、意志の強さが終始まなざしから伝わってきました。ハナが惹かれる強さを持った男性で、愚かでも間違ってもいないし、日系人部隊の活躍がその後の日系人の地位向上に影響したのは事実。サミーが戦ったのは「家族のため」、家族を救いたいから、パパにも認められたいからだったのに、目的を失った彼の戦後を考えると辛すぎました。

渡辺徹さんのパパは、サミーが表紙を飾ったLIFEを手にするシーンが、泣けて泣けて仕方なかったです。赤ちゃんを抱く姿からは優しく愛情を持つ人柄が伝わってきたし、天国の妻へ語りかけるシーンも印象的で好きでした。おじいちゃんはきっと、サミーとケイの背中を押し、サミーの戦場での活躍とケイの結婚を知った上で、安らかに亡くなったと思う。でもパパは…最期まで後悔し続けた人生だったでしょうか、辛いです。

上條恒彦さん演じる、オールドサミー。パパ、ごめんなさいという孤独で寂しい姿、抱き締めたくなります。遺言執行人だという女性が誰かを知る時、上手側の席から表情が見えなかったのが残念でしたが、名前を呼ぶその声と、後ろ姿で全部伝わりました。圧巻でした。上條さんから目が離せなかったので、目の前の濱田さん海宝さんをあまり見れず。渡辺さん、上條さんのお芝居を思い出すと今も泣けてきますが、お2人のキャスティングを決めた人凄すぎと思ってます。

アンサンブルの人数は少なめで、それぞれのキャラが立っていました。アンサンブルの方の中で特に素敵だったのが、まず若いエネルギーが溢れていた石井亜早実さん。それから小島亜莉沙さん、赤ちゃんを亡くして以後の強さが印象的でした。キムラ家以外の日系人家族たちにもドラマが描かれていますが、1度見ただけではとても追いきれず、細かいところが気になっています…

前方上手端っこで観ました。カーテンコールの撮影可能でした。衣装の配色がとても素敵です。

同じキャストで再演してくれたら、今度は何度も通いたいです。日本であまり知られておらず、触れられる資料も少なめで、埋もれてしまうかもしれない強制収容の話。多くの人に観て欲しいミュージカルだと思います。世界中でなくなることはない人種差別や、日本の入管問題などにも目を向けてもらえたら。